076929 ランダム
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Lee-Byung-hun addicted

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最終話

コタツにみかん 最終話

僕がヒョンに会ってから何日経っただろう。
僕の家のテーブルには夜、ビビンパが並んでいた。
「わたる。身体にいいんだからちゃんとお野菜も食べなきゃだめよ。本当に食わず嫌いなんだから・・・美味しいのよ。こうやって混ぜて食べると」
ママはスプーンを握って僕のビビンパに手を伸ばした。
いつもだったら僕は混ぜることを断固拒否してご飯の上の野菜を取ってくれと大騒ぎをする・・・はずだった。
でも、この日の僕は違った。
「いいよ。僕が混ぜるから」
ママからスプーンを受け取ると僕は野菜とご飯を豪快に混ぜ合わせた。
おまじないのようにあの時のびょんほんの声が聞こえた。
「ナンデモヤッテミテ。ジンセイハタノシイヨ」
花やしきの乗り物が乗ってみたら楽しかったみたいに意外と食べてみると美味しいのかもしれない。ビビンパを混ぜながらそう思う。
そして一口口に運んだ・・・・・・・なんだ美味しいじゃないか。
びょんほん・・・いやヒョン
「あなたに会えて良かった」
いつもママが観て泣いているDVDの名前。
まさに今の僕の気持ちだった。
僕はママに気づかれないようにカレンダーに向かって親指を突き出した。

次の日の夕方・・・パソコンを眺めていたママが悲鳴をあげた。
「わたる、わたる、大変。ねえ、花やしき、花やしき」
ママの話は興奮のあまり全く言葉になっていなかった。
どうもネットでびょんほんが浅草の花やしきで踊っていたという噂が流れたらしい。
「だから会ったって言ったのに・・・」
僕はつぶやいた。
「え、会ってどうしたの?握手した?なでなでしてもらった?何で頭洗っちゃったの~~。サインは?もらった?え?匂い?洋服?もうとっくに洗濯しちゃったわよ~。信じられない。いやだ。どうしよう・・・・・嗅いでおけばよかった。ちょっとあんた名乗った?え?わたるがお世話になりましたって言えばわかるかしら。いやだ・・どうしよう・・え~~~~」
僕は何だか相手をするのに疲れてDVDのスイッチを入れた。
僕はキム・イナが好きだ。あの足がパ~ッと上がるところが凄くかっこいい。
今日は大好きなオールイン第19話を観よう。
おやつは砂糖がいっぱいついたドーナツだ。前にヒョンが食べていたっけ。
今度テコンドーを始めようかな。きっとママも大喜びするだろう・・。
またおまじないのようにヒョンの声を思い出す。
「オカアサンタイセツニ・・」
うん。わかってるよ。ヒョン。
僕はパソコンの前で暴れるママを温かく見守った。


ジャラ~ンジャラ~~ン。
浅草寺の鈴の音が夜の闇に響く。
「ちょっとお願いしていこうよ」
揺はビョンホンの手をひいて浅草寺の境内に立っていた。
お賽銭を投げた彼女は目を閉じじっと祈っている。
ビョンホンも同じように・・・
彼がふと目を上げると揺はまだ祈っていた。
「100円でずいぶんお願いするんだね。揺は欲張りだな」
彼はそういうとゲラゲラと笑った。
「ひとつだけのお願いを丁寧にわかりやすくじっくりお願いしてたのよ。失礼だな。」
揺は口を尖らせてそう言った。
「何・・お祈りしてたの?」
「言ったら叶わないから言わない」揺は笑ってそう答えた。


「ただいま・・・」
二人は小さい声でささやいて電気の消えた下落合の家の玄関のドアをそっと開けた。
「もう、寝ちゃったかな・・」
時刻はもう0時を回っている。
居間にそっと足を踏み入れるとこたつの上にみかんと一緒にメモ書きが置かれていた。
「揺ちゃん&ビョンホン君へ
毎度毎度気を使うのは面倒なので早く嫁に行ってください。
クリスマスプレゼントは韓国宮廷料理フルコースでいいからね。
おばあちゃんはうちで預かるからお好きなだけどうぞ。
あ、そうそう。揺ちゃんにイ・ビョンホンからクリスマスプレゼントが届いてたわよ
もちろん私たちにもだけど。
本当に君は化けるの上手ねぇ~                不二子」

「え?どれどれ」
揺は慌ててメモ書きと一緒に置かれた紺色の封筒を手に取った。
「キャ~。クリスマスプレゼントだって」
そういってビョンホンの腕を何度も叩く。
「いやぁ~今年はどんなのかな。」
そう言ってペーパーナイフを探す揺の眼には目の前のビョンホンは写っていない。
「あった!」ナイフを見つけた彼女は慌てて封を切る。
中にはしっかりとエアクッションで梱包されたCDが入っていた。
「きゃ~。ちょっとこれしっかり包みすぎよ」
揺は早く中身を見たいと思うあまり包んであったエアクッションを引きちぎっている。
「おいおい・・」ビョンホンはその様子を怯える目で見ていた。
「何か獲物を見つけたライオンみたい・・・」
「え?何か言った?」
もうすぐ手にとれるところまで包みを解いた揺が反応する。
「いや・・・」ビョンホンはそう答え苦笑いをした。
「ひゃ~~~~カッコイイ!ちょっと・・・いい男じゃない。ねぇ?」
すっかり興奮した揺はそういいながら隣にいるビョンホンの腕をまたバンバン叩く。
「え?・・・・ううん・・・そう?」
照れたようにつぶやく本人を見て揺はふと我に帰った。
「いやだ・・・ごめん。本人だったね。あいや・・」
そういいながら揺はCDジャケットに写ったタキシード姿の彼と自分の隣にいる無精ひげを生やした彼を見比べた。
そしてくすっと笑う。
「何?」とビョンホン。
「ん?一粒で二度美味しい男ってあなたの事だと思って。韓国宮廷料理なんて安い安い。」
揺はそういうと電気を消してビョンホンの首にしがみついた。
そして彼を見つめて「いただきます」と微笑んで一言。
ゆっくりとキスをしながら彼を押し倒した。
「揺・・・」
「ん?」
「こたつのスイッチ入れて」
彼女の左手はこたつのスイッチをONにする。
こたつ布団からもれるオレンジ色の灯りがもぐりこんだ二人の顔をやさしく照らした。
「今日はみかんじゃなくて揺にしておく。どっちも栄養満点だからね。」
彼は悪戯っぽくそう言った。
「どうぞ、まるごと召し上がれ」
彼女は笑ってそう答える。
二人はオレンジ色の灯りの中、額を合わせ鼻をこすりつけて微笑んだ。


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